前回の記事で、自社ECサイトには「見えないコスト」がたくさんあるという話をしました。
今回はもっと踏み込みます。
正直に言います。自社ECサイトは、ほぼ失敗します。
「えっ、EC制作もやってる会社がそんなこと言っていいの?」と思いましたよね。いいんです。18年間ECの現場を見てきた人間として、嘘をつくほうがよっぽど罪深い。
この記事を読んで「やっぱり自社ECやめよう」と思ってもらっても構いません。むしろ、中途半端に始めて数百万円ドブに捨てるよりよっぽどいい。
それでも自社ECをやりたい方のために、「じゃあどうすれば生き残れるのか」も最後にちゃんとお話しします。
「自社ECサイトを作れば売れる」は幻想です
まず、これだけは最初にハッキリ言わせてください。
自社ECサイトを作っただけでは、1円も売れません。
楽天やAmazonに出店すれば、モール自体に何千万人というお客さんがいます。検索すれば商品が出てくる。ランキングに載れば勝手にアクセスが来る。セールイベントに参加すれば売上が跳ねる。
自社ECサイトには、それが全部ない。
オープンした瞬間のアクセス数は、ゼロです。文字通りのゼロ。砂漠のど真ん中にお店を建てたようなものです。看板もない、道もない、地図にも載ってない。誰もあなたのお店の存在を知りません。
「でも、SEOで上位に表示されれば……」
はい、その「SEOで上位表示」がどれだけ大変か、ご存知ですか?
自社ECが失敗する5つのパターン
18年間、数えきれないほどの自社ECサイトを見てきました。成功したところ、失敗したところ、途中で閉じたところ。
失敗するケースには、驚くほど共通のパターンがあります。
パターン① 「作っただけ」で満足してしまう
一番多いパターンです。
Web制作会社に数十万〜数百万円払って、きれいなサイトを作ってもらった。商品も登録した。決済も設定した。「よし、あとはお客さんが来るのを待つだけだ!」
——来ません。
サイトを作ることと、お客さんを連れてくることは、まったく別の仕事です。
飲食店に例えるとわかりやすいんですが、内装にお金をかけて素敵なお店を作っても、人通りのない路地裏に建てたら誰も来ないですよね?自社ECサイトはまさにそれ。しかも路地裏どころか、砂漠のど真ん中です。
パターン② 集客コストを甘く見ている
前回の記事でも触れましたが、自社ECに人を呼ぶには広告費がかかります。
Google広告でECサイトに集客する場合、1クリックあたり50円〜200円が相場。仮に100円だとして、月に1万人をサイトに連れてくるには月100万円。
ECサイトの平均購入率(コンバージョン率)は1〜3%程度。1万人来て、買ってくれるのは100〜300人。客単価5,000円として、月商50万〜150万円。
……あれ?広告費100万円かけて、売上が50万〜150万円?
そう、赤字です。もしくはトントン。ここに商品原価と運営コストが乗ったら完全に赤字。
「じゃあ広告を使わずにSNSで集客すれば……」
できます。ただし、毎日投稿を半年〜1年続けて、やっとフォロワーが数千人というのが現実です。その間の売上はほぼゼロ。あなたの会社に、売上ゼロの事業を1年間続ける体力はありますか?
パターン③ 「モールと同じ感覚」で運営してしまう
楽天やAmazonでそこそこ売れている会社が、「手数料がもったいないから自社ECも始めよう」と考えるケース。気持ちはよくわかります。
でも、モールと自社ECでは必要なスキルがまったく違います。
モールでは、モール内SEO・ポイント施策・イベント対応・広告運用が主な仕事。プラットフォーム側が用意したルールの中で戦う感じです。
自社ECでは、全部自分でやらなきゃいけない。サイトのSEO対策、SNS運用、メルマガ、Google広告、LINE配信、ブログ更新、UI改善、カート離脱対策……。
モールで売れてた人が自社ECに来ると、「こんなに大変なの?」と驚きます。モールがどれだけ「お膳立て」してくれていたかを痛感するわけです。
パターン④ 商品に「わざわざ自社サイトで買う理由」がない
これ、一番厳しい現実かもしれません。
お客さんの立場で考えてみてください。同じ商品が楽天でもAmazonでも買える。ポイントもつく。送料無料。翌日届く。レビューも読める。
その状況で、わざわざ知らない自社サイトで買う理由がありますか?
- 楽天→楽天ポイントがつく
- Amazon→翌日届く、レビューが信頼できる
- 自社EC→……何がある?
「自社ECのほうが安い」?それをやると利益が削れる。「限定商品がある」?作る余裕がある?「ブランドの世界観」?そもそもお客さんがサイトにたどり着かないのに?
「ここでしか買えない」明確な理由がない限り、お客さんは来ない。これが現実です。
パターン⑤ 制作会社に「作ってもらっただけ」で終わる
Web制作会社はサイトを「作る」プロです。でも、ECで「売る」プロではありません。
きれいなデザイン、おしゃれなレイアウト、スムーズな決済——サイトとしては完璧。でも、売れる商品ページの書き方、購入率を上げる導線設計、リピーターを増やすCRM施策……そういうのは制作会社の仕事じゃない。
「作ってもらったのに売れないんですけど」と制作会社に言っても、「集客はお客様のほうで……」と返される。当然です。契約にないんですから。
結果、お金をかけて作ったサイトが、半年後には更新もされず放置。これ、本当に山ほど見てきました。
じゃあ、なんで世の中「自社EC作りましょう!」って言うの?
ここまで読んで、「じゃあなんでどこもかしこも自社EC推すんだ?」と疑問に思いましたよね。
答えはシンプルです。
作る側にとっては「作ること」が仕事だから。
Web制作会社は、サイトを作れば売上になる。コンサル会社は、「自社ECの可能性」を語れば契約が取れる。プラットフォーム会社(ShopifyやBASE)は、店舗数が増えれば利用料が入る。
つまり**「自社ECサイトを作りましょう!」と言う人たちは、作った時点で儲かる人たち**です。その後、売れようが売れまいが、正直なところ関係ない。
これは悪意があるわけじゃないんです。それぞれの立場で正しいことを言ってる。でも、「作ること」と「売れること」の間にある巨大な溝を、誰も教えてくれない。
だから僕は正直に言います。ほとんどの中小企業にとって、自社ECは「今すぐやるべきこと」ではないと。
「絶対やるな」とは言いません。でも順番があります
ここまでネガティブなことばかり書きましたが、自社ECを全否定しているわけではありません。
やるなら順番を間違えないでください。
ステップ1:まずモールで「売れる商品」を作る
楽天でもAmazonでもYahoo!ショッピングでもいい。まずはモールに出店して、お客さんがお金を払ってくれる状態を作るのが最優先。
モールで売れない商品は、自社ECでも絶対に売れません。逆に、モールで月商300万、500万と売れるようになれば、「そのうちの一部を自社ECに流す」という戦略が見えてきます。
ステップ2:SNSで「お客さんとの接点」を作る
モールのお客さんは、基本的に「モールのお客さん」であって、あなたのお店のファンではありません。
ファンを作るには、SNSでの発信が必要。Instagram、LINE、X(Twitter)、YouTube——どれか1つでいいので、コツコツ続ける。
半年〜1年続けて、フォロワーが数千人、LINEの友達が千人くらいになったら、自社ECに誘導する土台ができます。
ステップ3:その上で、自社ECを「2本目の柱」として立てる
モールの売上がベースにある。SNSでファンもいる。この状態で自社ECを始めれば、「砂漠にお店を建てる」状態にはなりません。
- モールではできない限定商品やセット販売を自社ECで
- LINEやメルマガでリピーターを自社ECに誘導
- ブランドの世界観を自社ECサイトでしっかり表現
自社ECは「1本目の柱」ではなく、「2本目の柱」。この感覚がすごく大事です。
自社ECで失敗しないために、最低限必要な3つの条件
それでも今すぐ自社ECを始めたい、という方のために。
最低でもこの3つがないと、ほぼ確実に失敗します。
条件1:「ここでしか買えない」商品がある
他のモールやお店でも買える商品を自社ECで売っても、お客さんが来る理由がありません。オリジナル商品、限定セット、カスタマイズ対応——何かしらの「ここだけ」が必要です。
条件2:毎月の広告費 or SNS運用の覚悟がある
サイトを作ったあと、集客に毎月最低でも10万〜30万円の広告費を出せるか。もしくは、SNSを毎日更新し続ける覚悟と体力があるか。どちらもなければ、サイトは砂漠の無人店舗のままです。
条件3:「サイトを作る人」と「ECで売る人」が両方いる
前述の通り、サイトを作るスキルとECで売るスキルは全然違います。きれいなサイトを作ってくれる制作会社と、売れる仕組みを一緒に考えてくれるEC運営のパートナー。この両方が揃って、やっとスタートラインです。
……で、この3つが揃っている中小企業って、正直なところほとんどないんですよね。
だから、ほぼ失敗するんです。
まとめ:自社ECをやる前に、一度立ち止まって考えてほしい
この記事で伝えたいことは1つだけ。
「自社ECサイトを作れば売上が増える」は幻想。
- サイトを作っただけでは人は来ない
- 集客には広告費 or 膨大な時間がかかる
- モールと自社ECでは必要なスキルが全然違う
- 「ここでしか買えない理由」がなければ誰も来ない
- 制作会社に作ってもらっても、それだけじゃ売れない
厳しいことばかり書きましたが、知った上で始めるのと、知らずに始めるのでは天と地の差です。
次の記事では、「じゃあ数少ない成功事例にはどんな共通点があるのか?」を掘り下げます。
【次回予告】第三弾:それでも成功している会社は、何が違うのか?
ここまで「ほぼ失敗する」という話ばかりしてきましたが、もちろん成功している会社もゼロではありません。
Mr. CHEESECAKE、COHINA、BASE FOOD、土屋鞄製造所、FABRIC TOKYO——名前を聞いたことがある方もいるかもしれません。
ただ、これらの成功事例をよく分析すると、ある明確な共通パターンが見えてきます。そしてそのパターンを知ると、「自分の会社で自社ECをやるべきか」の判断がかなりクリアになるはずです。
次回は、自社ECで成功している会社の3つの共通点と、それを踏まえて中小企業が現実的に取るべき戦略をお話しします。
→ 第三弾「自社ECで成功している会社の共通点|調べてわかった3つのパターン」(近日公開)
それでも自社ECを検討したい方へ
グリフォトの運営会社・株式会社グリサポは、18年間楽天・Yahoo!ショッピングの運営代行を主力事業としてきた会社です。楽天総合大賞・Yahoo!ショッピング大賞を受賞したショップを長年サポートしてきた実績があります。
「まずモールで売上を作る」ことの重要性を、誰よりも知っている会社です。
だからこそ、お客さんに「今すぐ自社ECを作りましょう!」と安易には言いません。
- あなたの商品がモール向きなのか、自社EC向きなのか
- 今の売上規模で自社ECを始める意味があるのか
- やるとしたら、どのタイミングで、どんな規模で始めるべきか
こういった判断を、売る側の目線で一緒に考えます。
もちろん、モールの運営代行、商品撮影、自社ECサイトの制作(Shopify対応)まで、必要なことはワンストップで対応できます。
「自社ECを作るべきか迷っている」——その段階で相談してもらえるのが一番ありがたいです。
株式会社グリサポ / グリフォト EC制作・運営サポート&商品撮影専門スタジオ 1カット500円〜|モール運営代行・自社ECサイト制作(Shopify対応) お問い合わせ:https://greenhoto.com/ TEL:058-214-7318 / 携帯:070-9185-5651(担当:加藤)


